東京高等裁判所 昭和34年(ネ)869号 判決
証拠によれば、被控訴人は控訴人に対しその主張のように金二十万円(利息を天引され現実交付額は金十八万円)及び金五万円の二口の消費貸借上の債務を負担し、本件各手形は右金二十五万円の債務とこれに対する利息一万五千円の支払方法として控訴人にあて振出されたものであることが認められ、これと異り右手形がこれらの債務の支払に代えて振出されたものと認めるに足る証拠はない。
控訴人の主張する手形法第八十五条による利得償還請求権は手形所持人が手続の欠缺又は時効により手形上の権利を失いしかも他に何らの救済方法がない場合手形債務者にその受けた利益を保有せしめるのは公平に反するとの見地から認められたものと解すべきところ、前認定のように消費貸借上の債務の弁済方法として約束手形が振出された場合手形上の権利が時効により消滅しても控訴人は消費貸借上の債権を行使し得るのであつて、いまだ手形外の救済方法を失つていないのであるから、かかる場合手形債務者たる被控訴人は手形法第八十五条にいわゆる利益を受けたものに該当しないと解するのが相当であり、被控訴人に対し前記法条に基き利得の償還を求める控訴人の請求は理由がないものといわなければならない。
(梶村 室伏 安岡)